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【BAR TALK】出会いの前に居場所がいる?――少子化時代の男女とサードプレイス

更新日:3月22日


少子化、未婚化、交際未経験の背景にある“つながりの痩せ細り”


マスター:最近このテーマを話すと、どうしても少子化とか未婚化の話になりますよね。でも、よくあるニュースの切り口って、「最近の若者は恋愛しない」とか「若年層の性交渉未経験が増えた」とか、「交際未経験が増えている」とか、ちょっと乱暴に聞こえるんです。


常連客:そこを雑に語ると、だいたい外すんだよね。この話って、恋愛感情が消えたとか、若者が急に冷めたとか、そういう単純な話じゃない。むしろ問題は、人と人が自然につながる場が減ったことなんだと思う。少子化の手前には未婚化があって、その手前には交際未経験や関係形成の難しさがある。さらにその奥には、出会いの場の減少と、異性と接する回路の細りがあるんだよ。

労働政策研究・研修機構『日本労働研究雑誌』の岩澤美帆さん・三田房美さんの論文では、未婚化の背景として、職場を通じた出会いの縮小や、結婚相手と出会う機会の供給面の変化が重要だと論じられている。昔は職場、紹介、地域のつながりがある程度その役割を担っていたけど、その回路が弱くなったのに、代わりの回路が十分育っていないんだよね。 (JIL日本労働研究機構)


マスター:“恋愛しなくなった”というより、“恋愛や結婚に向かうまでの通路が細くなった”って感じですか。


常連客:そう、それ。恋愛って本来、いきなり婚活会場で始まるものじゃないんだよ。友達の延長だったり、趣味のつながりだったり、何気ない雑談の積み重ねだったり、そういうゆるいつながりの中から生まれることが多い。でも今は、その“前段階”が痩せている。だから、未婚化だけを見ても半分しか見えていない。


マスター:たしかに。昔みたいに会社の飲み会、地域のつながり、友達の紹介、習い事の横のつながり、みたいなものが全体的に減っている感じはありますね。


常連客:そうなんだよ。しかも今の人って、会社では会社の顔、家では家の顔で生きていて、その間に“素の自分”でいられる場所がないことが多い。でも、人が誰かに惹かれるのって、役割の顔じゃなくて、そういう素の輪郭が見えたときだったりするじゃない。会社員の顔のまま、あるいは疲れた家の顔のまま、「さあ恋愛しましょう」と言われても、そりゃ無理がある。


マスター:なるほど。つまり恋愛市場に出る前に、まず“人としてほぐれる場所”が必要だと。


常連客:かなり大事。家と会社の往復だけだと、人はどんどん機能で生きるようになる。そうすると、異性を見るときも「条件」、自分を見せるときも「スペック」になりやすい。でも本当の関係って、条件表の交換からは育ちにくい。だからサードプレイスみたいな、利害や役割から少し離れた場所が要るんだよ。


マスター:それって、少子化対策というより、まず人間関係の土壌づくりですね。


常連客:その通り。少子化を直接どうこうしようとすると、すぐに制度とか給付とかの話になる。もちろんそれも大事なんだけど、その前に、人が人に出会って、少しずつ親しくなっていく社会的な装置が弱っている。そこを立て直さずに、結婚しろ、子どもを持て、と言っても、かなり空振りする。


マスター:わかる気がします。未婚化って、個人の意思の問題でもあるけど、それ以前に“親密さの練習の場”が減っているのかもしれないですね。


常連客:うん。交際未経験とか若年層の性交渉未経験って言葉は刺激的だから注目されやすいけど、本当に見るべきなのは、そこに至るまでの関係形成のプロセスなんだよ。異性と自然に話す機会はあるか。気の合う仲間とゆるくつながる場はあるか。仕事以外で、自分が少し輝ける趣味や活動を持てているか。そこが空っぽだと、恋愛も結婚もいきなりは生まれにくい。


マスター:“モテる技術”の前に“人と自然につながる生活”があるかどうか、ですね。


常連客:そうそう。しかも面白いのは、出会いってガツガツ探すと逆に硬くなることがあるんだよ。婚活の場で「結果を出さなきゃ」と思うほど、会話が審査みたいになる。でも、趣味のコミュニティとか、何かを一緒に作る場とか、ちょっとした常連の集まりみたいな場所だと、関係がもう少し自然に熟していく。だから今、必要なのは“恋愛を頑張れ”じゃなくて、ゆるく人と混ざる場所を増やせなんだと思う。


マスター:それ、かなりしっくりきますね。恋愛や結婚って、目的として追いかけすぎると息苦しいけど、居場所や仲間が増える中で結果的に生まれることも多いですもんね。


常連客:まさに。しかも、そういう場にいると、人は会社の肩書きとか年収とかだけじゃなくて、会話の雰囲気とか、気づかいとか、楽しみ方とか、その人本来の魅力が見える。そこがないまま条件勝負だけになると、男女ともに消耗する。未婚化が進むのも、恋愛が面倒になるのも、ある意味では当然なんだよ。


マスター:なるほど。少子化って、数字だけ見ると国家的な問題ですけど、実はかなり手前のところで、人が生き生きと他人とつながれているかの問題なんですね。


常連客:そうなんだよ。このテーマって、つい「若者が結婚しない」「恋愛しない」で説教っぽくなりがちだけど、そうじゃない。本当は、人が魅力を取り戻せる生活をしているか社外で新しい顔を持てているか自然な出会いが起きる場が社会に残っているかを問う話なんだ。少子化も未婚化も、その結果として表に出ているにすぎない。


マスター:つまり、解決の方向も「制度だけ」じゃなくて、「場づくり」「関係づくり」なんですね。


常連客:そう。給付や支援は必要。でも同時に、地域でも、街でも、趣味でも、コミュニティでも、人が無理なく、ちょうどよく、何度も顔を合わせられる場を増やしていかないといけない。恋愛も結婚も、いきなり政策で生えるものじゃないからね。まずは人が、人として少しずつ開いていける空気が必要なんだよ。


マスター:それ、イベントのテーマとしてもすごくいいですね。“少子化を語る”というより、“人とつながる力をどう取り戻すかを語る”の方が、ずっと前向きだ。


常連客:うん。少子化を暗い話として消費するんじゃなくて、未婚化や交際未経験の背景にあるつながりの貧困をどうほどくか。そして、男女がもっと自然体で出会える場をどう増やすか。その方が、ずっと建設的だし、話していて希望がある。

でもまぁ、この話には続きがあってね…


マスター:え、なんですか、続きって?


常連客:人間関係ってそんなに単純じゃないだろ?マスター、酒が足りないよ🍸 この続きはバーで。


 
 
 

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