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【BAR TALK】人手不足と移民問題の正体は…


「人手不足って、本当に埋めるべき人手不足なのか?」


マスター:最近、外国人労働者の話題が増えましたね。介護、建設、物流、外食、コンビニ、宿泊。どこも人手不足です。


常連客:でもさ、そもそもコンビニってこんなに必要ですかね。深夜3時に棚がパンパンで、弁当が選び放題で、宅配は翌日届いて、駅前にはまたマンションが建つ。人口が減ってるなら、需要も減ってるわけでしょ。だったら供給力も減っていいんじゃないですか。


マスター:つまり、「人手不足だから外国人を入れよう」じゃなくて、「その人手不足、本当に埋める必要があるのか」という問いですね。


常連客:そう。日本人人口が減ってるのに、経済規模だけ維持しようとするから無理が出る。コンビニも減らす。外食も減らす。マンションも減らす。深夜営業もやめる。それでいいじゃないですか。摩擦も減る。


若手客:でも、それをやると不便になりますよね。深夜に買えない、すぐ届かない、店が少ない、サービスが高い。


常連客:だから、それを受け入れればいいんですよ。便利すぎたんです、日本は。


マスター:かなり正しいと思います。ただ、全部を縮めれば解決するわけではない。コンビニや外食は減らせても、介護、医療、物流、インフラ維持は簡単には減らせない。厚労省は、介護職員について2026年度に約240万人、2040年度には約272万人が必要になると推計しています。2022年度比で2040年度には約57万人増が必要です。(厚生労働省)


女性客:つまり、若者向けのサービスは減らせても、高齢者向けのケアは減らしにくい。


マスター:そうです。人口は減る。でも高齢者比率は高まる。需要全体は縮んでも、支えるべき需要は残る。だから「全部縮めればいい」ではなく、縮める産業と守る機能を分ける必要があります。


常連客:じゃあ、コンビニのための外国人労働者はいらない。でも介護やインフラのためには必要かもしれない。


マスター:その線引きが現実的でしょうね。つまり、外国人労働者政策の本質は、こうです。

“今の便利すぎる日本を維持するために外国人を入れるのか。縮小社会を崩壊させないために、必要な分野だけ受け入れるのか。”


若手客:似ているようで、全然違いますね。


マスター:ええ。前者は搾取に近づく。後者は社会設計です。


「誰のための政策か?」

女性客:でも、そういう政策って反対されますよね。過剰なサービスを畳む。必要な分野だけ外国人を受け入れる。聞こえは合理的だけど、誰が嫌がるんですか?


マスター:かなり多いです。しかも面白いのは、移民賛成派も反対派も、別々の理由で反対しうることです。


常連客:まず経営者でしょうね。


マスター:そうです。特に、低賃金・長時間・人海戦術で成り立つ業界です。外食、宿泊、食品製造、農業、物流、建設、介護。もちろん全部が悪いわけではありませんが、「人手不足だから外国人材を」という声は強くなる。実際、2025年10月末時点で外国人労働者は257万1,037人、外国人を雇用する事業所も37万1,215所と、いずれも過去最多です。(厚生労働省)


若手客:もう一部の会社だけの話じゃないんですね。


マスター:そうです。外国人労働者は、すでに日本経済の部品になっている。だから「過剰な店は畳め」と言われると、経営者からすれば「それはうちに潰れろということか」となる。


女性客:消費者も反対しそう。口では「外国人労働者が増えるのは不安」と言うけど、安い外食、安いホテル、翌日配送、深夜営業は手放したくない。


常連客:結局、消費者も共犯なんですよ。誰も「安い外国人を使え」とは言わない。でも「安くて便利なサービスを維持しろ」とは思っている。


マスター:そこが一番いやらしいところです。企業は安く働く人がほしい。消費者は安く便利な社会がほしい。政治家は縮小政策を言いたくない。自治体は人口減少を認めたくない。不動産・建設は新築と再開発を続けたい。その矛盾の穴を埋める存在として、外国人労働者が呼ばれる。


若手客:じゃあ、みんなの本音は「従順で低賃金で働いてくれる外国人労働者が欲しい」ってことですか?


マスター:かなり核心を突いています。ただ、正確にはこうです。全員がそう思っているわけではない。けれど、日本社会の利害構造が、結果的にそこへ吸い寄せられている。


女性客:本音というより、構造の欲望ですね。


マスター:そうです。日本人の賃金を上げる。サービスを減らす。営業時間を短くする。価格を上げる。地方インフラを畳む。こういう痛みを避けたまま、今の便利さを維持しようとすると、どこかに無理を押しつけることになる。


常連客:昔はそれを地方の若者、女性、非正規、下請けに押しつけてきた。今度は外国人労働者に向かっている。


マスター:まさに。だから、外国人労働者問題は、外国人の問題ではなく、日本社会が誰かに安く従順に働いてもらう前提で回ってきた問題でもあるんです。


若手客:それを認めたくないから、「人手不足」というきれいな言葉になる。


マスター:ええ。でも本当は、こう問うべきです。

“その人手不足は、社会維持のために必要な人手不足なのか。それとも、過剰な便利さを守るための人手不足なのか。”


「これから日本はどうなるのか?」

女性客:じゃあ現実的には、これから日本はどうなるんですか。外国人労働者は増えるんですか、減るんですか。


マスター:減らないでしょうね。むしろ増えると思います。ただし、「移民国家になります」とは言わない。表向きは「外国人材の活用」「秩序ある共生」「人材確保」という言葉で進む。


常連客:移民とは言わないけど、実態は移民社会化していく。


マスター:そうです。制度もその方向に動いています。技能実習制度は見直され、2027年4月1日から育成就労制度が始まります。育成就労は、技能移転による国際貢献ではなく、日本の人手不足分野での人材育成・確保を目的とする制度だと説明されています。(JITCO)


若手客:建前が変わるんですね。「学びに来てもらう」から「働き手として育てる」へ。


マスター:そうです。ここは大きい。しかも育成就労から特定技能へ、さらに長期就労や家族帯同の可能性へ進めば、単なる短期労働者ではなく、生活者になります。


女性客:つまり、職場の問題から地域の問題になる。


マスター:その通りです。職場だけなら賃金や待遇の話で済む。でも生活者になると、住宅、学校、日本語教育、医療、宗教、ゴミ出し、近隣マナー、地域コミュニティの問題になる。


常連客:そこで摩擦が起きる。


マスター:はい。しかも、外国人労働者を必要としているのは日本側だけではありません。外国人側にも「日本を選ぶかどうか」という判断があります。JICAの調査では、必要な外国人労働者数は2030年に419万人、2040年に688万人と推計されています。一方で、今後は送り出し国側の事情もあり、日本が必要なだけ人材を確保できるとは限らないと示されています。(JICA)


若手客:日本が選ぶ側じゃなくて、選ばれる側になる。


マスター:そうです。円安、低賃金、長時間労働、差別、生活コスト。これらが残れば、日本は「安いのに厳しい国」と見られる。ロイターも、円安や低賃金、人権上の課題が、日本の外国人材獲得競争のハードルになると報じています。(Reuters)


女性客:でも国内では、外国人が増えることへの不安も強まりますよね。


マスター:そこが今後の火種です。現実には、政府と企業は受け入れを増やしたい。でも地域住民は摩擦を感じる。不法滞在、税や社会保険、生活ルール、治安、学校、宗教、文化の違い。これらが政治争点化していくでしょう。


常連客:つまり、受け入れ拡大と管理強化が同時に進む。


マスター:ええ。「人手不足だから外国人材を受け入れます」同時に、「不法滞在対策を強化します」「生活ルールを守らせます」「社会保険未納を厳しく見ます」「悪質ブローカーを排除します」という流れになる。


若手客:開くけど締める。矛盾してますね。


マスター:でも、それが一番ありそうな現実です。日本は外国人労働者を必要としている。でも、移民社会になる覚悟はまだ持っていない。だから、名前を変えながら少しずつ進む。


女性客:「これは移民政策ではありません。外国人材の活用です」と。


マスター:そう言い続けるでしょうね。でも地域では、もう一緒に働き、隣に住み、子どもが同じ学校に通う。そうなれば、名前が移民かどうかはあまり関係ない。


常連客:一番まずいのは、外国人を“人”として受け入れる覚悟がないまま、“労働力”としてだけ使うことですね。


マスター:その通りです。外国人労働者を入れるなら、賃金、転職の自由、日本語教育、社会保険、住居、家族、地域支援までセットにしないといけない。そこをケチると、搾取と反発が同時に増える。


若手客:でも、それをやるとコストが上がる。


マスター:上がります。だから本当は、外国人労働者を受け入れるというのは、安い労働力を手に入れる話ではない。社会の受け入れコストを払う話なんです。


女性客:そのコストを払いたくない人たちが、「安くて従順な人材」を欲しがる。


マスター:そうです。だから、この問題の結論はきれいには終わらない。


常連客:じゃあ、日本はどうなるんですか。


マスター:おそらく、こうなります。

外国人労働者は増える。過剰なサービスの一部は縮む。でも、縮小を認めたくない産業は外国人材で延命しようとする。地域摩擦は増える。政治は管理強化を掲げる。それでも人手不足は続く。


若手客:なんか、出口がないですね。


マスター:出口はあります。ただし、それは「外国人を入れるか入れないか」ではない。

“便利すぎる日本をどこまで畳むのか。守るべき社会機能に、どこまで人と金を集中するのか。そして、来てもらう外国人を、安い労働力ではなく隣人として扱えるのか。”


女性客:結局、日本人側の覚悟の問題なんですね。


マスター:ええ。日本は移民を選ぶのではない。縮む覚悟を先送りした結果、移民的現実に押し流されていく。


常連客:きついですね。


マスター:きついです。でも、こういう話こそ、酒を飲みながらちゃんと話した方がいい。


若手客:SNSだと燃えるだけですもんね。


マスター:だから、バーで話すんです。結論を急がずに。正しさをぶつけるんじゃなくて、自分たちの便利さの裏側に、誰が立っているのかを見るために。


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